設立趣意書

所長

知能の本質を探求する

ドワンゴ人工知能研究所は、人類の知的フロンテイアを開拓することで社会を持続・発展に貢献しうる「次世代への贈り物となる人工知能の創造」を目指し、2014年に創設されました。このために、現在の人工知能(AI)技術では実現されていない、創造的に問題解決をおこなえる汎用性の高い知的能力の実現に向けた基礎的な研究に注力しています。
近年は、深層学習等の機械学習技術が進展し、データが十分に存在する問題領域ごと構築された特化型AIによって、人と同等もしくはそれ以上の能力をもつAIがつくり出されつつあります。このため、特化型AIを束ねたビッグスイッチ文型AIを作ることで、様々な典型的状況に対応できますが、データが不十分な未知なる状況において、新しい解決案を生み出すことはできません。

こうした背景から当研究所は、こうした未知状況に対応しうる創造的な問題解決能力を備えた知能技術の実現を目指しており、これが人間レベルの知能を工学的に実現する道筋において本質的に重要であると考えます。一方で、既に機械学習が提供する問題解決能力は人には理解できず、脳が進化的に獲得した汎用知能の仕組みが人間にとって理解可能であるとは限りません。ですから、創造的な問題解決能力の研究においても、その仕組を完全には理解できないままに、実現しうる可能性は常に念頭に置く必要があります。

そこで本研究所においては、こうした知能の本質を探求するために、以下の両方向からアプローチしています。

1)汎用知能の理解に基づく理論的アプローチ:
知能の本質的な性質を、情報とその間の計算処理よって理解すること、もしくは情報と計算処理をより基本的な要素に還元して理解することを目的とする。主に機械学習で獲得した様々な知識・概念などを柔軟に組合せることで、未知状況における推論を実現する知能技術の研究開発を行う。特に、未知状況を既知状況とみなしうるように問題を再定式化することは重要になる。このために、知識を記号と結びつけやすいように分解する技術、異なる領域に知識を写像する技術、知識を組合せるためにメタレベルから認識、制御、学習などを行う技術などがあります。
現在は、アクション抽象化、等価性構造抽出などの研究を進めています。
2)既存の汎用知能を参照する全脳アーキテクチャ(WBA)・アプローチ:
知能の本質を直接的に理解することは必ずしも容易では無いという前提から、脳が持つと考えられる、問題の定式化を柔軟に行えるアーキテクチャを参考として汎用人工知能を目指すアプローチ。本アプローチはNPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)において「脳全体のアーキテクチャに学び人のような汎用人工知能を創る(工学)」と定義されています。
現在は、NPO法人WBAIが提供を進めるオープン・プラットフォームの構築を支援として、コネクトーム情報学、確率的グラフィカルモデル・プラットフォームなどの研究開発を進めています。次第にこのプラットフォーム上での研究開発も充実させてゆきたい。
当研究所が、研究開発を進める技術の発展には、神経科学、認知科学、動物行動学、発達科学などといった、知能に関わる広範な知識の統合が必要であると考え、様々な組織・機関やプロジェ様々な組織・機関やプロジェクトと連携しながら研究を進めています。